ブッデンブローク家の人びと(21)

ブッデンブローク家の人びと〈中〉 (岩波文庫)

「わたし、だれよりもペルマネーダーさんという方と、話が合いましたの、……こんな変な名前の人がいると、お思いになりまして?……ホップの商人で、壮年ですが、まだ独り者で、冗談好きな感じの好い人です。食卓で私の隣にかけて、わたし、この人とばかり話していたんです。この晩、招かれた人のなかで、その人だけがプロテスタントでしたから。りっぱにミュンヘン市民なんですが、ニュールンベルグから出た家ですの。家(うち)の商会の名前も聞いて知っているそうで、トムはわかってくれるでしょうが、それが尊敬にみちた口調で口にされるのを聞いて、わたし、どんなにうれしかったでしょう。それに、わたしたちのことも、詳しくいろいろ聞かれましたの。兄弟は何人かっていうことや、そういったことを。エーリカやグリューンリッヒのことも。ニーダーパウルさんのお家(うち)へときどきお見えになるそうで、明日はたぶん、ウェルムゼーの湖へご一緒なさるんでしょう。」