ブッデンブローク家の人びと(18)

ブッデンブローク家の人びと〈中〉 (岩波文庫)

トーマスは、オランダ王国のコンズル(名誉領事)の役と称号を、父親の死後すぐに継ぐこともできたが、物の順序として、今度は公然と受け継ぎ、トーニを有頂天にさせた。ライオンと紋章と王冠のある中高のプレートは、ふたたびメング通りの破風屋根の正面にかがやき、その上方には「ドミヌス プローヴィーデビト(主よこおれを守らん)」と刻まれていた。

 若いコンズルは、これらの相続の仕事をすませるとすぐに、その年の六月中に旅行をした。アムステルダムへ商用旅行で出発したが、その旅行にどのくらいの時間をかけることになるか、本人は知らなかった。