ドイツの指揮者、オットー・クレンペラー(1885-1973)の人気がここ10数年ほどの間にじわじわと上がってきているそうだ。現在では、その『全情報を克明に音化しようとする』特殊な芸風も完全に市民権を得たといったところだそうだ。このクレンペラーが指揮するモーツアルトのオペラ「フィガロの結婚」をベスト盤として一貫して推薦し続けてきた音楽評論家がいる。宇野功芳さんだ。

宇野功芳のクラシック名曲名盤総集版 (講談社SOPHIA BOOKS)

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宇野さんはクレンペラーの指揮する「フィガロ」でスザンナ役のレリ・グリストの歌唱を絶賛して止むことがない。ぼく自身もクレンペラー・ファンの一人として、「フィガロ」を聴いてきたが、それはあくまでも音盤のうえのことで、レリ・グリストの舞台演技を観ることは出来なかった。ところが2003年末にTDKからカール・ベームの指揮する、レリ・グリストがスザンナを歌い演じる「フィガロの結婚」の舞台映像がついに発売されたのだった。
モーツァルト:フィガロの結婚 [DVD]

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この映像の舞台は素晴らしい。すべての音楽ファンにお奨め出来る数少ない超名演の素晴らしい記録、ベームの「フィガロの結婚」。

Canteloube: Songs of Auvergne

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フィガロ」のスザンナといえば1991年3月23日、ザルツブルグイースター音楽祭でベルナルド・ハイティンクの指揮でドーン・アップショーが演じ、歌ったスザンナを忘れることが出来ない。このアップショーの舞台を観たあとで、ジェイムズ・レヴァイン/メトの「フィガロの結婚」全曲盤でもアップショーがスザンナを歌っていることを知り、ときどきこのCDを聴いては、往時を偲んだりしている。