プルースト「スワン家の方へ」
ちょうど日本人の遊びで、水を満たした瀬戸物の茶碗に小さな紙切れを浸すと、それまで区別のつかなかったその紙が、ちょっと水につけられただけでたちまち伸び広がり、ねじれ、色がつき、それぞれ形が異なって、はっきり花や家や人間だとわかるものになってゆく、あの遊びのように、今や家の庭にあるすべての花、スワン氏の庭園の花、ヴィヴォーヌ川のスイレン、善良な村人たちとそのささやかな住居(すまい)、教会、全コンブレーとその近郊、これらすべてががっしりと形をなし、町も庭も、私の一杯のお茶からとび出してきたのだ。