ブラームスのピアノ協奏曲第二番

人間、いつ幸運が舞いこむかわからない。
彼の師匠、ワーグナーは50歳過ぎに幸運を掴んだ。
時の国王から鄭重に迎え入れられたのである。
師匠(ワーグナー)は弟子と弟子の奥さんとを国王から貰った億ションに呼び寄せた。
そしたら師匠(ワーグナー)はいつしか彼の奥さんと深い仲になってしまった。
ようするに師匠(ワーグナー)は、弟子の奥さんを寝取っちゃったのである。
彼は師匠(ワーグナー)と、そして奥さんと別れた後、さまざまな曲をいろいろなオーケストラで指揮したのだったが(もともと弟子は指揮が専門)、そんな彼の深い悲しみの心を慰めてくれたのが、当時何かと彼の師匠(ワーグナー)と対立的に取り扱われていた、あのブラームスくんだった。
かくして彼はブラームスの「ピアノ協奏曲第二番」をブラームスくん自らが弾くピアノと、彼の指揮とで、世界初演したのだった。
愛すれど心さびしくブラームスを指揮する弟子の名は、ハンス・フォン・ビューローというのだった。
師匠(ワーグナー)に妻を寝取られた男が指揮し、師匠(シューマン)の妻を思い続けた男(ブラームス)が弾く「ブラームスのピアノ協奏曲第二番」は、今日のような秋の夜に聴くのがふさわしいと想った。